【第513号】令和5年9月

≪  SUBARU   Eye Sight  ≫  

1917年(大正6年)元海軍機関大尉・中島知久平によって群馬県太田市で飛行機研究所が設立されます。
民営・中島の飛行機会社は1918年国産航空機を完成し、陸軍から20機を受注します。
第二次世界大戦中の中島飛行機は、三菱重工業、川崎航空機を凌ぐ日本最大の航空機・航空機エンジンメーカーとなります。

終戦後の1945年GHQによる財閥解体で、中島飛行機の生産は停止となり中島飛行機は15社に分割されます。
飛行機技術者は自動車産業へ転身し1953年(昭和28年)富士重工業として再出発します。
1958年(昭和33年)発売の軽自動車「スバル360」と1961年発売の軽商用車「スバル・サンバー」は技術的にも大成功を収めます。
以降「スバル」ブランドの自動車メーカーとしての地位を確立します。

1970年代初頭「レオーネ」を発売し、本格的な米国市場進出を開始します。1968年から1999年までは日産自動車と提携し、日産・チエリー・パルサー・サニー等の委託生産を請負います。
しかし、]日産の車両とスバルの車両はボディ骨格が大きく異なるため、設計や部品の共有化が行われることはありません。
1968年スバルオブアメリカを設立し、イスラエル・南米・オーストラリアなどアジア・オセアニア地方や中東・欧州へ進出します。
1960年代には年生産・10万台に満たない規模が1970年代後半には年生産・20万台へ規模を拡大します。

1985年プラザ合意での急激な円高と北米市場での深刻な販売不振に直面します。
1989年300億円の営業赤字となり深刻な経営危機となりますが、日本はバブル景気で資金調達が順調となり、1989年「レガシー」の発売で国内市場や北米市場での販売を回復します。

1990年には世界ラリー選手権出場など、企業イメージの向上策で年産100万台規模の小規模自動車メーカーとして現在に至ります。

バブル崩壊後に日産自動車が経営不振に陥り日産自動車の持つ富士重工業の売却を決め、2000年全株が筆頭株主米・GMに売却されます。
2005年米・GMの業績悪化によりGMが保有する富士重工株20%を全て放出します。
2005年10月放出株の8.7%をトヨタ自動車が引受けて筆頭株主となり、富士重工業とトヨタ自動車の提携が成立します。
この提携は富士重工業にとって大きな恵みとなります。

稼働率の下がっていたスバルの北米工場で「トヨタ・カムリ」の生産を請負い、品質管理や経費削減の方法を学びスバルの利益率を高めます。
北米特化の車作りに転換し、軽自動車の生産を撤退してダイハツにOEM委託するなどで2015年の利益率は業界一位となります。
スバルの世界シエアは1%しかありませんが、2015年売上高3兆2323億円、当期純利益は66.7%増4367億円、世界販売台数95万台で4年連続過去最高益を更新します。
北米にSUBARUブランドが浸透しており、北米市場で全生産高の70%が売れます。
2017年の創業百年を目途に社名を富士重工業から「SUBARU」に変更します。
日系メーカーの売上高ランキングは1位トヨタ 2位ホンダ 3位日産 4位スズキ 5位スバル で6位マツダ 7位三菱 となります。

SUBARU Eye Sight(アイサイト) は2008年世界で初めてステレオカメラだけの衝突被害軽減ブレーキ搭載車「レガシー」を発売します。

1989年300億円の赤字で経営危機に陥りますが、ステレオカメラによるぶつからない車の研究をはじめます。
1989年発売「レガシー」が好評で1991年の東京モーターショウではADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)を公開します。

1999年究極のぶつからないクルマ「レガシィ・ランカスター」の最上グレード専用装置として初登場します。
ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)はステレオカメラを使用して ①車線逸脱警報 ②車間距離警報 ③車間距離制御 ④カーブ警報 の四つの機能を備えます。オプション価格は65万円と高額でした。

第二世代のADAは2001年ランカスターの最上グレード「ランカスター6ADA」に搭載。

第三世代は2003年フルモデルチエンジする「レガシー3.0R」に搭載の新型ADAです。ブレーキ操作制御を実装し、更にミリ波レーダーが追加されますが、販売価格に見合う効果は出せませんでした。

2005年トヨタと提携後の第四世代2006年「レガシィ・モデルチエンジ」では、ADAは姿を消し、SI-Cruiseを搭載します。
SI-Cruiseはフロントグリル内に取付けるレーザーレーダーにより前方100m以内の先行車との距離・速度差を検知して、ドライバーが設定した車速と車間距離を維持し前方車に追従します。

2008年「レガシー」Eye Sightの技術は、ステレオカメラでまず走行可能領域を3次元的に認識します。
次に走行可能空間内にある全てのモノを障害物行候補と認識し、どこからどこまでが1つの物体の塊なのかを判定します。
続いて物体の種類(クルマ、人、壁など)を特定した後に、撮像フレーム間の動作量から各物体の速度を計算します。
ステレオカメラは車内のフロントガラスの位置に装着するので、誤作動は少なく前方車など障害物に接近に衝突を回避するよう ①警告 ②弱い自動ブレーキ ③強い自動ブレーキが掛かります。

Eye Sight ver2 2012年の「エクシーガ」はver1と基本的に同じですが、国交省に「衝突軽減」からぶつかる前に止まる。
前走車への追突回避可能な相対速度は最大30㎞/hで「衝突回避可能」を認めさせます。

Eye Sight ver3  2014年「レヴォーグ」は カメラをカラーカメラとし、視界性能を向上します。
視野角‣視程を従来比40%向上し全走車の認識範囲は110mとなります。

Eye Sight 新世代 2022年「クロストレック」に搭載される「新世代アイサイト」は超広角の単眼カメラがステレオカメラに加わり、視野角が128度になります。
広い認識範囲によって運転時の死角が大幅に減少。
いままで回避できなかった事故をアシストして回避します。
見えにくい前側方から接近するクルマを検知して警告を発信、危険時ニハブレーキが作動します。
カーブ前や料金所では事前にクルマが把握して適正な速度に減速します。
渋滞時にはハンドル離しても走行が可能で、渋滞時のストレスが飛躍的に軽減されます。

「乗っている人の安全第一」は中島飛行機からの「企業理念」です。最新のEye Sightでは追突事故発生率84%減少、歩行者事故発生率は49%に減少します。