【第497号】令和4年5月

≪  日立物流  ≫

1950年2月茨城県日立市を本社に、日立製作所の物流部門の日東運輸㈱が創業します。

1952年12月商号を日立運輸に改称1964年本社を東京都渋谷区へ移転。1967年11月西部日立運輸㈱、東京モノレール㈱と三社合併し商号を日立運輸東京モノレールに変更します。1978年12月「販売物流情報システム」の運営を開始、1981年東京モノレール㈱を分離し商号を日立運輸㈱に変更。1985年7月創業35年を機に商号を㈱日立物流に変更します。

現在も日立グループに属しますが国内事業の大半がグループ外の取引で、日立物流は 3PL(サード・パーティ・ロジスティクス=荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託し遂行する)業務で国内トップクラスを占めます。2010年にホーマック㈱{昭和51年釧路で石黒ホーマ設立}の子会社/ダイレックス㈱を日立物流が譲り受けて日立物流ダイレックスを設立。DCMホーマックは2016年恵庭市に56億円の物流拠点「札幌商品センター」を建設、北海道・東北・関東への物流拠点として日立物流ダイレックスが運営します。

米inforの日本法人・インフォアジャパン㈱ (海外拠点管理を行うクラウド型会計とERP=企業経営の基本となるヒト・モノ・カネ・情報を適切に分配し有効活用するシステム、を提供する企業)は、コロナ禍で拡大した需要と供給の不確実性が、サプライチエーンへ深刻な影響を与えている状況から、2022年のサプライチエーンに関する予測を公開しました。

〈予測1〉 北米及び北欧の主要な港におけるコンテナ船の遅延は2023年まで継続。現在の混雑遅延は単に「海運」の問題ではなくグローバルなサプライチエーンネットワークの問題です。港湾の労働力、トラック運転手の労働力、空コンテナとコンテナ用シャーシの利用に関する課題は、歴史上最も高い消費者需要に起因し、アジアからの出荷量と相まって船舶の積込と荷降ろしと、港から陸上の倉庫や集積所への商品の移動で停滞が続き起ります。

〈予測2〉 企業はコスト削減を追求するだけでなく輸送中の在庫をリアルタイムで把握し、貨物輸送能力、サプライヤーの仕掛品、財務の健全性、環境負荷の低いモーダルシフトや出荷管理の進捗状況などを総合的かつ多次元的に把握しなければならない。またサプライヤーのネットワークやグローバルな輸送ルートで問題が発生した場合には、迅速に対応できる様エラー監視を強化する必要がある。製品をエンドユーザーに届けるラストワンマイルは、ファーストワンマイルの管理における制御性と柔軟性の向上に左右されます。

〈予測3〉 長期化するグローバルサプライチエーンに備えるためには、現在の混乱と輸送能力の制約が世界的均衡状態に落ち着いたとしても海上、航空貨物輸送コストは上昇します。

荷主はより信頼性の高い貨物輸送能力を確保するため,非船舶運航業者や3PLの利用を拡大します。より多くの荷主と主要運送業者は流動的な貨物輸送の能力予測を求め、全体的な貨物輸送ナットワーク計画の改善を図る。より多くの経営幹部はグローバルなロジスティクスとサプライチエーン戦略を綿密に検討し、生産ライン、最終顧客及び総合的なビジネス収益性を保つためのコスト管理と供給の不確実性の低減を図ります。

企業がデジタルで経営を変革するDX TREND デジタルトランスフォーメーションが注目されており、日立物流は荷物の全行程を可視化するシステムSCDOS (Supply Chain Design & Optimization)で「未来の在庫」を把握します。

世界では物流の目詰まりが深刻化しており、特に遅れが出やすいのが海上輸送です。日本から米欧へは20-30日掛かり、平常時でも天候により遅れが出る上にコロナ禍で港湾労働者の人手不足が続き、混乱に拍車が掛かりました。日立物流の物流可視化サービスSCDOSはこんな事態もフォローします。海運約100社の過去三年間の運航実績データベースから、遅延の少ない最適な航路を調べることで荷物の遅延発生率が20%下がりました。

2019年にサービス開始したSCDOSは「依頼した荷物が今何処にあって、何日後に届くかが正確に解らない」という荷主の悩みに応えます。物流は壮大な「バトンリレー」と言えます。例えば中国の工場で生産した衣料品は、工場から港まで陸運A社が運び、港から日本へ海運B社が運び、港から物流センターや倉庫、店舗へ陸運C~E社が加わります。SCDOSは各物流業者が自社システムに入力する入出荷情報とデータを連携し、荷主や各業者が閲覧出来ます。海運では日本発着航路を持つ全企業の8割(100社)をカバーし、中小企業の多い陸運でも大手陸運業者を通じてデータを習得します。 日立物流はサプライチエーン全体を「見える化」することで、荷主企業は発注と在庫管理を効率化でき、各運送事業者は配送を円滑にできます。SCDOSの初期費用は500万‐1500万円程で月額利用料を38万円に設定、既に受注は百件を超えます。 全ての荷物の情報を把握出来れば的確な「未来在庫」も予測できます。各地の倉庫にある在庫が、販売計画に伴ってどう減少するのか。最低限必要な数量を保持する為には、何日後に補充される必要があるのか。コストを最小化する発注タイミングと数量は。計画通りに現実の荷物が運ばれているのか。これらを「商品の最小管理単位」別に管理します。 例えば製造小売業は商品数が多く、倉庫や店舗のキャパシティを超える物量を抱えていたり逆に少なすぎたりします。非効率な配送が続いたら、拠点の配置見直しを提案するなど「物流データ」を基に未来を予測し、変化に備えた体制を作ります。

日立物流は2021年4月コンテナ海運最大手A・P・モラー・マークス(デンマーク)と業務提携しました。マークス社は米・IBM社のブロックチエーン(分散型台帳)技術を活用し、荷主や船舶企業のほか港湾や税関当局など、貿易関係者が物流情報や関連書類を共有できるシステムTrade Lensを開発しました。このシステムには300以上の貿易関係者が参加し600以上の港湾とデータを連携しています。日立物流・中谷康夫社長は、Trade LensとSCDOSと合体すればサプライチエーンの最適化が更に進むと云います。 2021年4月SCDOSに輸送工程のCO2排出量を算出するサービスを搭載し、輸送距離や荷物の重量などから陸海空の輸送ルート別CO2排出量を算出して荷主企業の拠点別にリポートを自動作成します。複数の小型トラックで運んでいた荷物を大型トラックにまとめ、貨物積載率を向上させるCO2削減計画を提案します。環境対策に積極的な企業は、自社の排出量だけでなく「スコープ3」と呼ばれる部品調達など取引全体に関わる排出量の開示にも踏み込んでおりニーズは高まると予測します。 日立物流のDXは日本経済新聞より転載させて戴きました。