【第501号】令和4年9月

≪   アマゾン の 物流   ≫

アマゾン・ジャパンは自社物流網を急拡大しており、宅配の仕分け等を担う拠点を2022年は2021年比1.6倍とし45拠点以上とします。これまで3大都市圏が中心でしたが東北、四国、沖縄にも広げ、荷物の半数以上を自社で配送しております。EC(ネット通販)で宅配のスピード競争が激化するなか、地方を含めて翌日配送を拡大します。

今回増設する宅配拠点のデリバリーステーション・DSはアマゾンが持つ大型の物流施設・フルフィルメントセンター・FCから出荷した荷物を、地域別に集約し配送先まで届ける中継地点の役割を担います。

アマゾンは7月に2022年中にDSを18拠点新設すると発表しました。2021年の増設数は5拠点なので一気に3倍のスピードで増設します。これまで東京、名古屋、大阪の三大都市圏に重点を置いてきましたが、新たに青森県八戸市など東北地方に4拠点を開き、四国や沖縄に初拠点を設けます。

新たなDSには商品のラベルを自動で読み取り、地域毎に仕分ける最新の設備を順次導入し作業効率を向上させます。翌日配送が可能な地域を北は青森から沖縄まで広げ2023年中には全国で実現します。アマゾンの担当者は現時点で20カ所以上のFCを年に2-3カ所のペースで増設し、すでに荷物の半数以上は自社で配送し今後も更に増やすと話します。

2015年アマゾンは最短1時間の宅配「プライムナウ」を開始、2016年頃にはEC(ネット通販)の宅配の急増と人手不足で物流業界はドライバー不足となります。2017年ヤマト運輸はアマゾンの宅配に値上げと輸送総量を抑制します。2019年アマゾンは「個人事業主・社員でなく個人請負」に委託する「アマゾンフレックス」を開始します。同年ライフコーポレーションと提携しネットスーパーで最短2時間配送を実現します。2021年ヤマト運輸はアマゾン出店者向けに割引サービスを開始します。2022年アマゾンは配送施設を1.6倍とし自社配送を急拡大します。

新型コロナウイルス下の巣ごもり需要を受けて、EC(ネット通販)は急速に拡大しました。ヤマト運輸など宅配大手3社(ヤマト運輸=シェア43.8%・佐川急便=シェア28.2%・日本郵便=シェア22.8%)の2021年度の取扱貨物数は46億8719万個で過去最高となりました。

ECを手掛ける各社は宅配スピードを競っており、楽天グループは2021年に日本郵便と物流の新会社を設立し、即日配送などのサービス拡大を目指します。

Zホールディングス(ソフトバンクグループ)傘下の男性衣料通販大手「ZERO」も即日配送エリアを順次拡大し,出荷件数全体の7割をカバーします。

こうしたなかアマゾンロジスティクス事業本部は、FCとDSが互いを補うことでより質の高いサービスを提供でき、関東や関西などの主要エリアだけでなく地方でも配送スピードの向上を図ると云います。

不在時に家の玄関先などの指定場所に荷物を届ける「置き配」も、年内にDSを新設する青森や沖縄など10県で利用可能となり、全都道府県にサービスは広がります。

オートロックマンションでも、アマゾンの配達員が自動ドアの鍵を時限的に解除し玄関前に荷物を届ける「キー・フォー・ビジネス」の導入も進んでおります。2021年11月時点で約800棟だった提携マンション数は現時点で約25000棟と3倍になります。

アマゾンの宅配ロッカーの設置場所も、前年11月比65%増の約3000カ所となります。

自分の商品を配送する時、自分が配送するのに運送免許は不要なので、アマゾンはここ数年自社配送を強化しております。 EC(ネット通販)の拡大と人手不足から配送ドライバーが不足となり主力委託先のヤマト運輸が、運賃の値上げや荷物の総量抑制を実施したことなどを背景に自社配送の拡大へ舵を切ります

アマゾンの配送サービスとして、玄関先に荷物を届ける、中堅・中小の物流会社を「デリバリープロバイダー」として組織し始めます。アマゾンの「置き配」は宅急便の様に「受領サイン」を貰いません。それは万が一「荷物が不明」になっても「商品価格は数千円」なので再配送「宅急便は全荷物の20%」するよりコストは安いからです。

2019年アマゾン自ら個人事業主のドライバーと契約する「アマゾンフレックス」という制度を導入します。人工知能・AIを活用し、スマートフォンのアプリを通じて効率的配送ルートを提案するなど、クラウド事業などで培ってきた技術力を生かして規模を拡大してきました。現在フレックスのドライバーは数千人規模に達し、今回のDS新設で更に数千人と新規契約し規模を拡大します。 自社配送網の構築で先行する米国では、既に取扱荷物量で米国最大規模の宅配事業社になります。2021年末時点では、北米で253のFC、467のDSを展開します。 アマゾンは膨大なEC(ネット通販)の取引を処理する為のインフラを他社に開放することで、新たな収益源を育ててきました。AIなどのソフトウエア郡をオンラインで他社に提供するクラウド事業のアマゾン・ウェア・サービス(AWS)がその典型です。

足元ではEC(ネット通販)の成長に減速感が見られますが、米国では他社のECサービスから配送を受託する事業を手掛け、物流も新たな柱に育てる方針です。日本でも他社のECの物流を手掛けることは十分可能性はあります。物流業界では慢性的なドライバー不足は続いており労働環境の苛酷さを指摘する声も大きく、旺盛な宅配事業にどう応えるか、アマゾン自身が答えを出さなければなりません。

アマゾンプライム会員の会費は、日本では2019年に年会費を1000円値上げして4000円です。欧州でも値上げをしており、米国では2022年2月に4年振りに値上げして139㌦(140円/㌦=19500円)です。インフレに伴う物流費などの上昇を消費者に転嫁しております。

アマゾンプライムは2005年に始まり、無料配送のネット通販や動画配信などの特典を受けられるサービスで、会員数は2021年に世界で2億人を突破します。

アマゾンは中小薬局と提携し日本でも処方薬のネット販売に乗出します。日本の薬局は6万店ありますが、アマゾンと組む薬局は電子処方箋をもとに薬を調剤し、患者にオンラインで服薬指導をします。自社配送で当日・翌日配送が可能になり、プライム会員には配送料無料にするなどメリットが提供されれば大手ドラックストアにとって脅威になります。

日経新聞から転載させて戴きました。