【第493号】令和4年1月

≪ Amazon / アマゾン ≫

Logistics(ロジスティクス)という言葉は、軍事用語「兵站・へいたん」で軍事活動における人材、兵器、装備、食糧などを管理し、必要な場所に補給・輸送する機能を意味します。

19世紀後半になってロジスティククスという言葉が経済活動でも用いられます。

「ロジスティクス1・0 = 輸送の機械化」古来、大量長距離輸送には船舶が使われます。

歴代の統治者は馬やラクダでは大量輸送が叶わず、運河による船舶輸送のため運河網を整備します。19世紀に入ると鉄道の出現で運河・船舶輸送は、線路網の鉄道輸送に代わります。20世紀には馬車からディーゼルエンジンによるトラック輸送が参入します。

「ロジスティクス2・0 = 荷役の自動化」1950年代に入ると第二の革新、荷役の自動化が始まります。

第二次大戦で導入されたフォークリフトは戦後もパレットと共に物流に組込まれます。1960年代に普及する海上コンテナは、船舶に積込む時間を大幅短縮(1万㌧を数時間)し、積み降ろし港ではコンテナをトレーラーに直接積込みます。

「ロジスティクス3・0 = 管理・処理のシステム化」1970年代に入ると第三の革新、管理・処理のシステム化が芽生えます。

1978年輸出入・港湾関連情報処理システムが構築され、行政機関、輸出入業者、物流会社、海運・航空会社、通関業者、金融機関などを相互につなぎます。1985年から輸出貨物を扱い、成田、羽田、関空、福岡、新千歳がカバーされ1991年から海上貨物を取扱い、日本における電子行政手続きの草分けとなります。

倉庫管理システムでは在庫管理台帳が入庫、検品、梱包までトータルで管理するシステムに代わります。輸配送管理システムでは配送計画、運行状況、実車率・積載量の算出にも対応します。

「ロジスティク4・0 = 物流の装置産業化」管理・処理システム化の先にあるのが、AI・IOTなどの次世代テクノロジーの進化と活用の拡大で、省人化と標準化による物流の装置産業化へと続きます。

自動運転トラックの実用化、ドローン、倉庫ロボットによる荷出さばき、梱包など、人から機械システムに替わり人手に頼った作業がなくなり省人化となります。また納品先の販売状況に応じて商品を出荷し、需要予測をもとに在庫の配置や数量をコントロールします。交通状況に応じて配送ルートを組みかえるなどの管理業務までも機械やシステムが代行し、やがてロジスティクスの完全オートメーション化が実現する時代となります。

その前段に必要な人数が減る、誰でも出来る、ハード作業は無くなるといった通過期があります。標準化とはロジスティクに関する様々な機能・情報がつながることです。省人化と標準化が進むと物流は「労働集約産業」から「装置産業化」していきます。

独・ダイムラー(トラック販売世界一)は、2025年を目途に高速道路での自動運転試験走行を開始します。長距離トラックの運転手は免許不要の安全保安員に替わり、長時間運転は解消されます。2018年にトラックの隊列走行の実験が高速道路で始まり、先頭車両はドライバーが運転し2台目以降の車両は自動走行システムを使った無人隊列走行となります。

アマゾンでは2012年ロボットメーカーを買収、出荷する商品を保管棚から取出して梱包場所まで運ぶロボット(ドライブ)は、ピッキング作業に20㎞/日 歩く作業を省力化します。ドライブは全世界のアマゾンの倉庫に導入され労働生産性は大幅に高められます。

アマゾンは購入実績、閲覧履歴などを基に「おすすめ商品」を提案し、当日配送を目指しドローン配送の実証実験も始めております。また購入実績だけでなく、キャンセルや返品の履歴、商品ページのマウスカーソルの動態、季節や曜日での変動などで翌日の注文数を予測します。注文を受ける前に出荷する、予測発送システムの運用を開始しており在庫拠点を増やすことなく当日配送の範囲を拡大します。アマゾンはユーザーの顧客情報をマーケティングに活かすために、スマートスピーカーのアマゾンエコーを販売します。搭載される音声アシスタント「人工知能・アレクサ」に音声でメッセージを送信すると、天気予報の確認、レストランの検索、家電製品の操作など様々なユーザー情報を「見える化」しマーケティングに活かします。

2018年のアマゾンの無人コンビニ1号店は、店内にセンサーを張り巡らしてレジレスを実現します。POSシステムでは解らない身なりや誰と一緒か、などの情報が手に入りマーケティングに活かされます。誰が何を買ったのかの情報を蓄積し、多種多様な商材を取り扱うことで特定個人の購買傾向を把握することが可能です。メールアドレスや住所の個人情報も蓄積し、注文を受ける度にアップデートされます。

アマゾンはEC(電子商取引・通販)で儲けている会社ではなく、企業向けのクラウドインフラサービスであるアマゾン・ウエブ・サービス/AWSを利益の源泉としています。

AWSのシエアはマイクロソフト+IBM+グーグルの合計より大きいのです。競合各社はクラウドインフラサービスを提供する為にサーバーシステムを構築しておりますが、AWSは自社のEC事業の為に構築された巨大なサーバーシステムの「空きスペース」を、他社に提供するので低価格で高収益率となります。

AWSには仮想サーバー、ストレージ、データウェアハウスなどのITインフラの構築に必要な機能が揃っており、顧客の要望に広く応えることも特徴といえます。年間数千件以上の新サービスの提供と機能改善を実施して顧客の高評価を得ます。物流センターを核としたアマゾンの「物流ネットワーク」はAWSと同様にEC事業の為に投資されたアセット(資産・財産)と言えます。物流センターやロボット、自社トラックと一般個人に宅配業務(自社商品を個人事業者に委託するので営業免許は不要)を委託するアマゾンフレックスを開始します。

航空輸送や海上輸送の輸送承認をえたアマゾン物流ネットワークは、既存の物流会社以上の機能性を持ちます。何時の日かアマゾンが世界最大の物流会社になっているかも知れません。物流サービスを「仕組み化」して、広く多くの荷主・貨物を取り扱うことに成功した一部特定の「ロジステックス・プラットフォーマー」のみが高収益を獲得、荷主との直接接点を失った大多数の物流企業は下請け的存在となります。

2021年9月に発足したデジタル庁は、10月行政システムのクラウド化に使うサービスに

アマゾンのAWSとグーグル・クラウド・プラットフォームを採用します。 2025年までに政府は、独自に整備運用する全国自治体システムの税や住民基本台帳、児童手当などを政府と共通のガバメントクラウドに移行する方針です。